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ワークスデザインラボ薬園台

就労移行支援と就労継続支援の違いとは?

更新日:2023年3月2日



本記事では、就労移行支援、就労継続支援(A型・B型)について解説します。 これらの支援は、いずれも障害を持った人や重い病気によって、一般の企業で働くことが困難な人が受けられる福祉サービスで、これらは「障害者総合支援法」によって定められています。







ワンポイントコラム

今回の本記事では「就労」という言葉が多く出てきますが、その言葉の意味を解説します。


「就労」と似た言葉に「就職」という言葉が、「就職活動をする」「企業に就職する」といったように使われています。

意味は「仕事を見つけて会社に雇用され、勤めること」です。

「就労」にも同じように「仕事に就くこと」という意味がありますが、加えて「実際に労働をしている状態」という意味もあります。ここが「就職」との明確な違いです。


今回の記事にて取り上げる内容は、どれも障害者に対する就労支援についてです。

ただ「仕事に就くこと」だけを目標にするのではなく、その後も長く安定して「就労」し続けることを目指してもらいたいという思いから「就労」という言葉が使われているのだと考えられます。





就労移行支援とは?


就労移行支援の事業所は、一般企業で働くために準備をする場所です。 ビジネスマナーやパソコンスキル等の就労に必要な知識・能力を身につける訓練を受けたり、スタッフ協力の元、企業探しや履歴書の書き方、面接などの就職活動全般をすることができます。 また、一般企業に就職が決まった後の定着支援も行っています。 就労をする場所ではないので、賃金は発生せず、国からの支援があるので利用料金もかかりません。 利用できる期限は2年と限られていますが、障害者の総数約965万人に対して、全国で約3千カ所ある事業所を、約3万5千人の人々が利用しています。



実際の体験談 Aさん


私は、A型事業所に就職する前に、千葉市の就労移行支援に約1年通っていました。


朝10時に出所してから、午前中は「あいうえお自己紹介」などのミニゲームをして場に馴染んだ後、企業研究や感染症対策、もの作りなどのグループ向けプログラムに参加しました。


午後は、13時まで昼休みを取り、14時まで個別に設けられた活動として、ワード・エクセルを学んだり、読書などをしていました。


また、現在のA型事業所に就職するために、スタッフ同行のもと、ハローワークに行って求人票を探してもらったり、応募書類のアドバイスをもらったり、事業所の見学や面接にも同席してもらいました。


こういった活動は、カウンセリングをして、利用者の個性に合った形で提供されています。




このように、就労移行支援というのは、一般企業での就労の準備をするための事業所となっています。





就労継続支援とは?


就労継続支援の事業所は、一般企業で働くのが困難な人に向けて、就労の機会を提供する場所となっています。 A型とB型に分かれており、これは事業所と雇用関係にあるかどうかが主な違いです。




就労継続支援A型


就労継続支援A型では、利用者が事業所と雇用関係を結びます。 企業から受注した業務を行うことで、法律で定められた最低賃金を満たした形で働きながら、一般企業への就職を目指して行きます。 一般企業より短い労働時間となることが多く、各種保険も適用されるため、安心して働くことができるようになっています。また、利用できる期間に制限はありません。 全国で約4千カ所ある事業所を、約8万人の人々が利用しています。



実際の体験談 Bさん


現在、私もA型事業所で働いています。


週5日のうち木曜日だけ事業所に通所し、1日4時間のパソコンを使ったデータ入力や、今書いている記事の執筆などをして、最低賃金は保証されているので、収入面でも安定できます。


また、作業中に体調を悪くした時は、横になって休ませてもらったり、早退をしてよく休んだりするなどの配慮もして頂いているので、とても助かっています。




このように、就労継続支援A型というのは、事業所と雇用関係を結び、障害者なりの配慮をしてもらって働くことができる事業所です。




就労継続支援B型


就労継続支援B型では、利用者は事業所と雇用関係を結びません。 重い障害や難病を抱えていても、働くことで知識や能力の向上が見込める人が多く働いています。 A型よりもさらに短い労働時間での就労ができますが、工賃はA型と比べると低く設定されています。 また、こちらも利用期間の制限はなく、全国で約1万4千カ所ある事業所を、約29万人の人々が利用しています。



実際の体験談 Cさん


私は、B型事業所に入ったことはありませんが、就労移行支援に通っていた時の進路候補にB型事業所もありました。


その事業所では、「1日2時間程度の労働で、休むこともできるので、体調の心配がなくパソコンの入力などの作業ができますが、工賃は月に2万円弱くらい」と言われました。




このように、就労継続支援B型というのは、事業所と雇用関係を結ばず、利用者のペースで働くことのできる事業所となっています。





就労移行支援と就労継続支援A型・B型の違いを比べてみよう!


就労移行支援と就労継続支援A型・B型の概要について前述しましたが、いかがでしょうか? 移行支援と継続支援、どちらも似たような名前ではあるものの、全く異なる内容であることに驚かれたと思います。 なんだか少しややこしいな、と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。 そこで、就労移行支援と就労継続支援A型・B型の基本的な違いを分かりやすく表にまとめてみましたので、それぞれの違いを一緒に比較してみましょう。




このように、就労移行支援と就労継続支援では、どちらも「障害者の就労を支援するサービス」という点では同じです。 しかし、対象となる人や利用期間などが異なります。 また、就労継続支援A型とB型では雇用契約の有無が大きな違いであり、A型では最低賃金が保証されているのに対して、B型では最低賃金よりも低い工賃が支払われます。 ここからは、それぞれの支援サービスの具体的な内容や特徴について、より詳しく解説したいと思います。また、就労移行支援と就労継続支援を実際に利用した、精神障害のある当事者の体験談もお伝えいたします。




就労移行支援の特徴

就労移行支援は、安定した就労をするための様々なスキルを身につけ、就職に向けて準備をする場所です。主な訓練内容は、以下の通りです。


  • 挨拶や笑顔、傾聴力といったコミュニケーション能力の向上

  • ストレスコントロールやアンガーマネジメント等のセルフケアプログラム

  • ストレッチやダンスなどの身体運動

  • パソコンスキルの習得・MOS等の資格取得

  • 名刺交換や身だしなみ等のビジネススキルやマナーの習得

  • 模擬就労(グループワーク)での実践的な訓練

  • 職場実習や企業訪問

  • 履歴書や応募書類の添削、模擬面接などの就職活動サポート

  • 就職後の職場定着のための支援


就労移行支援では、一般企業等への安定した就労に向けて、段階的なプログラムを組んで実施されます。 原則2年という限られた時間の中での訓練となりますので、個別支援計画というそれぞれの希望や課題解決に合わせた短期目標や長期目標を立てて支援が受けられます。 多くの就労移行支援事業所では、週2〜3日や午後のプログラムだけなど、それぞれの体調に合わせて短い時間から通所をスタートすることができます。 まずは、服薬管理や生活リズムの安定から始まり、自己理解やセルフケアについて学びます。 そして、コミュニケーションスキルやビジネススキル等を身につけ、それぞれの適性に合った職場探しを行います。 就職活動の際には、応募書類の添削だけでなく面接同行といった支援を受けることもあります。 就職が決まった後も6ヶ月間は定期的な面談があったり、障がいのある方と企業との架け橋になったりと、安心して働き続けるためのサポートをスタッフがしてくれます。(※6ヶ月経つと就労定着支援という別の就労支援サービスに移行する事業所が多いです。) このように、生活面でのサポートから就職後のフォローまでを一貫して行うのが、就労移行支援です。 また、就職がゴールではなく、企業にて働き続けることを大切にしているため、生活管理や体調管理といったセルフケア関連の訓練が充実している点が特徴ともいえるでしょう。




就労継続支援A型の特徴


就労継続支援A型は、現時点では一般就労は難しい方が、サポートを受けながら実際に仕事をする中で訓練を行える場所です。 主な仕事内容は、以下の通りです。


  • パソコンを用いたデータ入力作業

  • カフェやレストランなどでの接客・販売業務

  • パン工房やお弁当工場での製造業務

  • ホテルやビルの清掃業務

  • インターネットオークションの出品代行

  • アクセサリーや雑貨などのものづくり

  • 梱包や値札付けなど倉庫での軽作業

  • 農作物の栽培、パック詰め、出荷作業


就労継続支援A型の仕事内容は事業所によって異なりますが、一般企業の仕事内容と大きく変わりはありません。 利用者はA型事業所と雇用契約を結んだ上で働きますので、各都道府県の最低賃金が保証されております。最低賃金に関しては、最低賃金法に基づき年々変更されます。 勤務時間は事業所によって異なりますが、1日4〜6時間であることが多いです。一般就労に比べると短いため、給料が低いケースは少なくありません。 しかし、一定の支援がある職場で働いて給料支給を受けながら、一般就労に必要な知識やスキルを身につけることができる点は大きなメリットとなります。 そのため、現時点では企業で働くことが不安、あるいは困難である方に向いているかもしれません。 スキルが高まった方に関しては、一般企業への就職に向けた支援もあります。 このように、就労継続支援A型は、利用者と事業所が雇用契約を結び、給料をもらいながら就労訓練をすることができる福祉サービスです。




就労継続支援B型の特徴


就労継続支援B型は、体調が安定していない方や、社会人経験がない方や少ない方を対象に生産活動を提供する場所です。 主な作業内容は、以下の通りです。


  • 衣類やリネンなどのクリーニング

  • 農作業

  • 各種部品の加工

  • パンやクッキーなどの製造

  • パソコンでの簡単なデータ入力

  • 事業所が運営するカフェやレストランのホール業務

  • 袋詰め製品へのシール貼り作業

  • 工場でのピッキング・パッキング作業


就労継続支援B型では、A型と違って雇用契約を結びません。 それぞれの障害特性や症状に応じて、無理をしない範囲で比較的簡単な作業をして、工賃といわれる報酬をもらいます。 工賃とは、何かしらの物を作ったり、作業したりする労力に対する手間賃のことです。 基本的に、支払われる工賃は最低賃金よりも低い金額であり、勤務時間もA型に比べて短い傾向にあるので、平均月収は低めとなっています。 収入を得ることを優先するというよりかは、自身の体調に合ったペースで働くことを優先するイメージです。

このように、就労継続支援B型は、障害などの程度や体調に合わせて、自分のペースで働くことができます。 A型と違って事業所を利用できる対象年齢に制限がない点も、B型の特徴として挙げられます。





精神障害当事者Hさんの体験談



私は、就労移行支援の事業所を2ヵ所利用し、現在は「ワークスデザインラボ薬園台」という就労継続支援A型の事業所を利用しています。


20代前半に精神を患いましたが、心療内科に通院と服薬をしながら、他の人たちと同じように働き友人と遊び、充実した日々を過ごしておりました。

そして25歳の時、転職がきっかけで安定した就労が困難となり、外へ出ることも人に会うことも負担となり、家で過ごす時間が増えました。


今後のことを家族と相談するために実家に戻り、その際に見つけたのが市の委託を受けた民間法人の「生活と仕事の総合相談窓口」でした。

早速アポイントを取って相談員の方にお会いし、「就労移行支援」という就労福祉サービスがあることを知りました。


実際に、とある就労移行支援事業所の説明会へ足を運びました。

民間法人の相談員の方には「他にも様々な事業所があり、各事業所によって雰囲気も訓練内容も異なるので、実際に見学や体験をしてみてはどうか」と助言をいただきました。


確かに、一言で「就労移行支援事業所」といっても、決められたプログラムを集団で受ける事業所もあれば、各自のペースに合わせてプログラムに参加するか個別訓練をするか選択する事業所、個別で淡々と軽作業の訓練をする事業所もあれば、実際の職場を想定して複数名でコミュニケーションを図りながら訓練をする事業所もありました。


そうして見学や体験を通して、最初の就労移行支援事業所(以下、M事業所)を選びました。

M事業所を選んだ理由は、事業所の訓練内容はもちろんのこと、スタッフの明るく話しやすい雰囲気に惹かれたからです。


当時の私は、生活リズムもバラバラで、週5日通所する体力も気力もない状態でした。

そのため、始めは週に3日、1日2時間から通所をスタートし、徐々に生活リズムを整えていきました。


それから1年3ヶ月。子供服のアパレルにて接客・販売スタッフとして、障害者雇用にて再び働きだすことができるようになったのです。

就職した後も月に1~2回、M事業所のスタッフと面談をして、日々感じている不安や困っていることを相談したり、企業側とも面談の時間を取っていただいて安心して働ける環境づくりのサポートをしてもらいました。


しかし、人事異動などの環境の変化に順応できず、気持ちの波によって安定した就労が困難となり、3年目に入る前の雇用契約の更新をすることができませんでした。

障がいを開示し、オープン就労として約2年間務めて感じたことは、合理的な配慮をしてもらえることの安心感です。

そして、やはり「どんなにスキルがあっても休まずに安定して働けなければいけないこと」でした。そのためにも、土台となる体調管理や日常生活管理が重要であることに気付かされました。


就労移行支援は前途でもお伝えしたように、原則2年間の利用と定められています。これは1つの事業所ごとに2年間利用できるというものではありません。

私の場合は、M事業所にて1年3ヶ月通っておりましたので、残されている利用可能期間は9ヶ月でした。


生活をしていく上で、金銭的にも余裕のなかった私は、今すぐにでも再就職したい気持ちでしたが、改めて就労移行支援事業所に通い直すことにしました。

前回お世話になったM事業所に再び通うこともできましたが、当時のスタッフがほとんどいなかったため、改めて他の就労移行支援事業所を探すことにしました。

そして新たに、精神や発達に特化した事業所(以下、D事業所)に通所することにしました。


D事業所では、3つのコースに分かれて、段階的にステップを踏みながら就職を目指すといった特徴がありました。

残り9ヶ月という限られた期間の中で、焦らずそれぞれのコースをクリアしながら就職先を見つけていけるようにスタッフと相談して個別支援計画を作成してもらいました。

順調にコースをクリアしていき、就職活動のコースに進んだ時には、残りの利用期限が3ヶ月でした。

就職活動を進めている中、このタイミングで大きく体調を崩してしまう出来事があり、このまま一般就労を目指すのは難しいという判断となりました。

そこでスタッフが提案してくださったのが就労継続支援A型でした。


就労継続支援といっても仕事内容は多岐にわたっています。

私は事務職として一般企業に務めることを目指していたので、パソコン業務に特化した事業所を探しておりました。

そこでいくつかの就労継続支援A型事業所をスタッフがピックアップしてくださり、その中から「ワークスデザインラボ薬園台」という今の事業所に出会いました。

見学や体験、面接を経て、就労移行支援の利用期限ギリギリで内定をいただき、今に至ります。


現在の事業所では、基本的に週5日、1日4時間にて業務を行っております。

今まで接客業の経験しかなく、パソコンでの実務経験はありませんでしたが、データ入力やパワーポイントを使った資料編集、その他いろいろなプロジェクトに参加する中で、経験を積んでおります。


まだまだ安定した就労が出来ているわけではございませんが、今は働く機会をいただきながら自分の障害特性に合わせた働き方を模索するチャンスだと考えて日々過ごしております。

手厚いサポートを受けながら、体調に合わせて無理なく働けるような合理的配慮のある職場は、私にとって合っているのだと思います。

そして、ゆくゆくは一般企業にて、中長期的な就労ができるようになることを目指しております。


就労移行支援事業所でも就労継続事業所でも、基本的な日中の活動時間は似ています。

一般的には、午前中2時間の訓練に取り組み、休憩をはさんでから午後の訓練を2時間行います。


ここで、具体的な1日の流れについてのイメージをご紹介いたします。

こちらは現在、私が一般企業への就労を目指して日々訓練をしている就労継続支援A型事業所「ワークスデザインラボ薬園台」の様子です。

実はこの動画も、利用者の方々が構成から撮影・編集をして作成しています。



※ワークスデザインラボ薬園台の紹介動画






就労移行支援と就労継続支援どっちがいい?選び方のポイント


これから就労系障害福祉サービスの利用を検討するにあたって「どのサービスが自分に合っているのかわからない」という方もいるかと思います。 そこで、それぞれのサービスの長所・短所を表にまとめてみました。以下のポイントを、事業所選びの際の参考にしてみてください。


​就労移行支援

​就労継続支援A型

​就労継続支援B型

1.収入の多さ​

​​✕

​​◯

​​△

2.入所のしやすさ​

​​​◯

​​​△

​​​◯

​3.利用時間の自由度

​​◯

​​△

​​​◯

​4.知識・スキルの習得

​​​◯

​​​◯

​​​​◯

5.就職活動支援​

​​◯

​​△

​​△

6.一般就労への移行率​

​​◯

​​△

​​△

7.一般就労後の支援​

​​◯

​​✕

​​✕

8.就労体験の機会​

​​△

​​​◯

​​​​◯




1.収入の多さ


就労移行支援は、一般就労を目指して「訓練」をおこなう場所なので、基本的に収入を得ることはできません。 まれに、施設外実習や生産活動をおこなった際に「工賃」が支払われる場合もありますが、月に数千円から1~2万円の範囲に収まっています。


一方、就労継続支援は「就労」の機会の提供を主目的にした場所ですが、A型事業所では「賃金」、B型事業所では「工賃」が支払われます。 「工賃」とは、一定の作業をおこなった際の対価として支払われるものですが、金額は低い傾向にあります。 それに対して「賃金」は労働契約を結んで仕事をすることになるので、都道府県ごとの最低時給が支払われます。 令和3年度のA型・B型事業所の平均月額賃金(工賃)は以下のようになっています。



令和3年度の就労継続支援事業所の平均工賃


B型事業所の平均月額は16,507円なので、他者からの援助や公的扶助なしに、自力で生計を立てるのは難しいでしょう。 一方、A型事業所は平均月額81,645円なので、家賃補助や障害年金等、他の制度を併用しながら生活できる可能性があります。 今すぐ、少しでも多く収入がほしい人はA型事業所がおすすめですが、差し迫ってお金が必要でない場合は就労移行支援とB型事業所も選択肢に入れて良いでしょう。




2.入所のしやすさ


入所までの流れは、いずれのサービスも以下のような順番で進みます。


  1. 問い合わせ

  2. 見学

  3. 面接(面談)

  4. 手続き

  5. 受給者証発行

  6. 利用開始


就労移行支援とB型事業所は雇用契約を結ばないので、見学や面談後に問題がなければ、利用に向けて手続きを進めていきます。 A型事業所の場合は、雇用契約を結ぶことになるので、一般就労の求人に応募するときと同じく、履歴書を持参して面接を受けることになります。 面接の結果、不採用になることもあるので、必ず利用できるわけではないということを念頭に置いておくと良いでしょう。




3.利用時間の自由度


B型事業所の場合、週5日、1日の開所時間4~8時間程度のうち、好きな時間だけ利用することができます。 生活リズムを取り戻すことや、決まった場所・時間に通うことに慣れることを目標に、一日2、3時間や週2~3日からスタートする方もいます。 就労移行支援の場合も、基本的にはB型事業所と同じで、利用者とスタッフの間で話し合って利用日数や時間を決めます。 ただし、将来的に一般就労することを想定している場所なので、事業所によっては「週5日、4時間以上」のような推奨時間を設定しているところもあります。 A型事業所の場合は、労働契約にもとづいて、あらかじめ労働時間が決められています。 基本的には週5日、一日4時間程度働いている方が多いようですが、利用者の体調や生活状況に合わせて、時間や日数を調整してもらえることもあります。 時間の自由度でいうと、A型事業所よりも、就労移行支援とB型事業所の方が融通は利きやすいでしょう。




4.知識・スキルの習得


就労移行支援では、訓練を通じてパソコンやビジネスマナー、接客等の知識・スキルを向上させることが期待できます。 一方、就労継続支援でも、生産活動を通じて仕事に必要な能力を伸ばしていくことは可能でしょう。

例えば、当社運営のA型事業所・ワークスデザインラボ薬園台では、リスト入力やウェブサイトの制作、動画編集などの業務を取り入れて、実践的にスキルの向上を図っています。 ご自身の興味や伸ばしたい分野に合った事業所に入所することで、就労移行支援・就労継続支援のどちらでも、新たな知識・スキルを身につけることができます。




5.就職活動支援


一般就労への支援では、就労移行支援で全般的な支援を受けることができます。 履歴書の添削や面接の練習の他に、事業所で独自の求人を開拓してくれることもあります。 一方、就労継続支援のサービス内容にも「一般就労に必要な知識、能力が高まった者について、一般就労への移行に向けて支援」という記述が含まれているので、一定の支援を受けることはできるでしょう。 ただし、就労継続支援には「就労の機会の提供」という大きな目的があるので、就労移行支援に比べると限定的になってしまうかもしれません。





6.一般就労への移行率


令和2年の統計では、就労系障害福祉サービスから一般就労への移行率は、就労移行支援が52.9%(1万1,614人)と5割を超えているのに対して、A型事業所は21.4%(3,330人)、B型事業所は10.6%(3,655人)と大きく差がついています。



就労系障害福祉サービスから一般就労への移行率の推移



数値上では、早い段階で一般就労を実現するには、就労移行支援の方が有利といえるでしょう。 ただし、一般就労を目的としている就労移行支援に対して、就労継続支援には一般就労を今のところ考えていない人や、福祉的就労がしたくて利用している人も多数いるので、就労継続支援から一般就労できないというわけではありません。 ​本人の一般就労への関心の高さによって、移行率は大きく左右されるでしょう。




7.一般就労後の支援


一般就労への移行率とともに、就職後の「定着率」も最近では重視されてきています。 2017年の障害者職業センターの調査報告によれば、就労移行支援事業を利用した人の一般就労後の定着率は、3ヶ月後で95.6%、一年後でも82.3%を維持しています。 一方、就労継続支援の利用者の職場定着率は、A型・B型事業所ともに一年後には59%にまで下がっています。


就職前に利用した就労系福祉サービスの種類別の職場定着率


定着率に差がある理由のひとつには、就労移行支援では利用者が就職したあとも原則6ヶ月までは相談・支援をおこなっていることが挙げられます。


さらに、6ヶ月を経過したあとも支援をおこなう「就労定着支援事業」が併設されている事業所が多いことも、ポイントのひとつです。 就労定着支援では、一般就労後に職員が利用者と面談したり、企業や関係機関との連絡・調整をおこないます。 就労定着支援事業を併設している事業所の割合を比較すると、就労移行支援が89.2%と圧倒的に多いことがわかります。


就労定着支援事業を併設している就労系障害福祉サービス

「一般就労したあとも相談がしたい」「新しい職場で働いていけるか不安がある」という方には、就労移行支援の方が支援を受けやすいかもしれません。




8.就労体験の機会


「障害福祉サービスを利用して働く経験がしたい」という方には、就労の機会を提供している就労継続支援A型・B型がおすすめです。 就労移行支援でも、施設外実習や事業所内で生産活動を実施している事業所もありますが、メインは就職のための訓練になるでしょう。 就労継続支援では、販売や農業、物作りからパソコンを使った作業まで、事業所によってさまざまな業務が用意されているので、ご自身の興味に合った仕事を経験しやすいかもしれません。





就労移行支援と就労継続支援で必要な手続きとサービスの上手な利用方法とは?


それではいよいよ手続き編です。 就労移行支援と就労継続支援では、必要な手続きや証明書などに違いはあるのでしょうか。 ここでは、利用を思い立ってから実際に通えるようになるまでの流れを、必要なものを挙げながら紹介します。




就労移行支援事業所の利用までの流れ


① 就労移行支援事業所を探す

インターネットでの検索や役所の障害福祉課の窓口へ行く


② 利用したい事業所を決め、利用の意思を伝える 資料請求や見学などをする


③ 役所の障害福祉課窓口等で事業所の利用申請

【障害福祉サービス受給者証の申請】


〈必要なもの〉

  • 申請書

  • 医師の意見書

  • サービス等利用計画書

  • 障害者手帳や自立支援医療受給者証(あれば)

  • 印鑑(認印)


申請時に案内された日時に役所へ面談に行き、ヒアリングを受ける


④ 申請が通り次第利用開始可能 ヒアリング後2週間~1ヶ月程度で障害福祉サービス受給者証が届く 事業所に連絡し、通所開始




就労継続支援事業所の利用までの流れ


① 就労継続支援事業所を探す

インターネットでの検索や役所の障害福祉課の窓口へ行く ハローワークで就労継続支援事業所の求人を問い合わせてみる


② 利用したい事業所を決め、事業所の定める選考を受ける 説明会や見学などをし、面接の申し込みをする


〈必要なもの〉

  • 写真貼付の履歴書

  • 職務経歴書など事業所の定める書類

  • ハローワークの紹介状


③ 採用が内定したら、役所の障害福祉課等で事業所の利用申請  

【障害福祉サービス受給者証の申請】


〈必要なもの〉

  • 申請書

  • 医師の意見書

  • サービス等利用計画書

  • 障害者手帳や自立支援医療受給者証(あれば)

  • 印鑑(認印)


申請時に案内された日時に役所へ面談に行き、ヒアリングを受ける


④ 申請が通り、雇用契約を結んだら利用開始可能

ヒアリング後2週間~1ヶ月程度で障害福祉サービス受給者証が届く 事業所に連絡し、雇用契約を結んだら通所開始


以上が簡単なそれぞれの手続きの流れです。 違いはもちろんありますが、必要なものは実はほとんど同じです。 どちらの通所にも必要不可欠なものは障害福祉サービス受給者証です。




サービスを上手に利用するために準備したいこと


なんといっても、情報収集が大切です。各事業所の情報は以下の方法で入手することができます。


  • インターネットで「住んでいる地域名」「就労移行支援事業所」や「就労継続支援事業所」で検索する

  • 役所の障害福祉課への相談で地域の事業所の一覧などがもらえることがある

  • 医療機関に置いてあるパンフレット


少しでも気になった事業所には、どんどん問い合わせをしてみましょう。 ここで疑問に思うこととして 「問い合わせはするとして、資料請求やWEBサイトでは一体何を確認したらいいの?」 ということではないでしょうか。 そのために、まずやっていただきたいのが、自分が「何の目的で、何を求め、何を目指すのか」を明確にすることです。 何故ならこれが事前に明確になっていないと情報をうまく選べなくなるからです。 例えば、もともと一般企業で正社員として働いていたが、産休後の育休中に産後うつを発症し、退職してしまったFさん。 子どもも手が離れ症状も落ち着いてきたので、今後の経済的なことを考えてパートをしようと思っている。 彼女の場合は「安定した収入を得る目的で、うつの特性や幼児の育児への理解を求め、スキルを活かし継続して就労することを目指す」でした。 ですので事業所の「就職実績」や「定着実績」という点よりも「自宅からの距離」や「在宅ワークの有無」「給与」「障害へのサポート体制」などの点が重要、ということになります。 そう言われても思いつかない、よくわからない、そんな方も多いと思います。 事前準備として自分自身の現在の状態や希望をノートなどに書き出してみましょう。


◆ 項目の例

  • 障害や難病の名前

  • 障害者手帳などの有無と等級

  • 障害や難病の現在の症状と簡単な経緯

  • これまでの職務経歴

  • 就労において心配なこと

  • 必要なサポート

  • 事業所の利用で得たいもの

  • 就職したい時期


これらと照らし合わせて、事業所で確認したり相談したいこともまとめておきます。


  • 事業所の環境(通所の所要時間、交通費や交通機関、周辺施設の確認、利用者同士の距離感やスタッフとの距離感など)

  • 事業所で行うこと(業務・講座・活動・取り組みなど)

  • 同じ障害の利用者の過去の実績や就労状況

  • 受けられるサポートの種類(イヤーマフの使用など)

  • 利用したいとなった時にすぐ利用できるのか(定員や利用料など)


もちろん、これだけではなく、思いついたことはなんでもメモしておきましょう。




【最後に】

就労移行支援事業所・就労継続支援事業所とは何か、その違いや選び方など紹介してきましたが、いかかでしたでしょうか。 どちらも同じ「障害福祉サービス事業所」ですが、その目的や内容にはかなり違いがあったと思います。 今回の記事を参考にしていただき、是非どんどん問い合わせや見学をして、自分に合った事業所を選べるとよいですね。



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